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私は朝と夕方と真夜中に入浴する。朝、ぬるいうちに私がはいり、そのあと熱くして家族がはいる。それをほッとくと、夕方、私には手頃のぬるさとなっている。
ふたたび相手の鞄にちらりと目をやりながら、練吉は半ば信じない風に訊いた。
「うん」
この分では永くなりさうだと思つて、房一が腰を浮かし気味にすると、
温泉宿へ一旦いったん踏み込んだ以上、客もすぐには帰らない。宿屋の方でも直すぐには帰らないものと認めているから、双方ともに落着いた心持で、そこにおのずから暢のびやかな気分が作られていた。
「ふむ。悧巧者だな、お前は」
「かう云ふと、君は笑ふかもしれんが、自分の親だの子だのいふ者を診るのはじつに困るんだ。なんだかそはそはしてね」
「お噂はうけたまはつています」
「本日は、私ごとき者までお招きに預りまして」
「もう遅いんですよ、おぢいさん。泊つてつたらどうです」
広い家の中では盛子一人だつた。もうとつくに羽織袴も居間に出して置いたし、履物も足袋も揃へた。帰りさへすればすぐにも出かけられるのだ。だが、足音も聞えはしない。盛子はさつきから何度も玄関に出てみたり、それから裏口から外の小路に出て河原の方をすかし見たりした。
小谷は房一に話しかけた。
「いや、もう御免蒙つて脱いで行かう」