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「どうもこれぢや――」
「やつぱり徳さんが多いね」
房一には連れが二人あつた。
まだぎこちなく坐つて伏目に固くなつている堂本の様子から、自分が誰かといふことは判つてはいるのだなと思つた房一は、
「じゃそのお松まつと言う女はどうしたんです?」
鬼倉は一瞬、相手を地着きのごろか何かと思つたらしい、一種の殺気をひらめかした。
「わたしはね、こいつは割れさうだなと思つたもんでね」と、笏で自分のはいている木沓を指して、
ふたたび相手の鞄にちらりと目をやりながら、練吉は半ば信じない風に訊いた。
このどこの誰とも判らない相手を満更知らぬでもないらしい様子を見せながら、房一は手早く書きこむと、
「ねえ。はやく」
「いや、まあ。――後の分もありますよつて、黙つて預つといて下さい」
「おい、ビールをくれ」と、しやがれた低い声で云ふと、土間の安テーブルの前に腰を下した。
「かう云ふと、君は笑ふかもしれんが、自分の親だの子だのいふ者を診るのはじつに困るんだ。なんだかそはそはしてね」